点字サインと私たちの生活

全盲の僕に見えること~地域移行しています~(第7回)

(文・写真撮影:筒井 安彦

こんにちは。iPadライフクリエーターの筒井安彦です。今月も、私の視覚障害者としての日常から、皆さまへのお届けです。今回は、私たちの生活に深く関わる「点字サイン」について、その意義と私自身の経験を交えてお話ししたいと思います。


私は生まれつきの「視覚障害者全盲」です。幼い頃、盲学校(現在は「視覚特別支援学校」と呼ばれています)に通い、日々の勉強の中で点字を学びました。点字との出会いは、私にとって世界を広げる重要な一歩でした。指先で情報を読み取るという行為は、私に自立と安心感を与えてくれました。
私が子供の頃、街中で点字サインを見かけることは今ほど多くありませんでした。当時は、点字ブロックの整備が進み始めた頃で、点字の情報保障はまだ限定的だったと記憶しています。しかし、ここ30年ほどの間に、点字は私たちの日常の中に深く浸透してきたと感じています。例えば、スーパーで並ぶソースやお酒、牛乳パックや調味料などの商品パッケージには点字が印字されています。これは、特に全盲の私たちにとって、商品の中身を判断する手助けになり、生活の選択肢を大きく広げてくれています。また、一部の家電製品にも点字がついており、これらの細かな配慮が、私たちの生活をより便利で、安全なものにしていることは言うまでもありません。


しかし、一方で「視覚障害者=点字」というイメージが世の中に根強く残っているのも事実かもしれません。点字が非常に重要であるにもかかわらず、すべての視覚障害者が点字を読めるわけではないという現実があります。中途失明された方の中には、点字の習得が難しいと感じる方もいらっしゃいますし、弱視の方々も、点字よりも文字の拡大表示や音声読み上げを主な情報伝達手段として利用されているケースが多くあります。そのため、点字サインの普及とともに、音声案内や触知図、そしてデジタル技術を活用した多様な情報保障手段の整備も不可欠だと考えています。

愛用の炊飯器
愛用の炊飯器


私自身の生活においては、点字サインは欠かせない情報源の一つです。私の家にある家電製品の中でも、点字サインがついているものは3台あります。一つは日々の家事を支える洗濯機、もう一つは生活の快適さを保つ温水洗浄便座(ウォシュレット)、そして毎日の食卓に関わる炊飯器です。

以前に比べて、こうした生活家電に点字サインが増えてきたという印象を強く持っています。特に洗濯機では、予約洗いをする際など、複雑な設定をする時に点字を確認して操作しています。例えば、「標準」「脱水」「予約」といった主要な機能ボタンの横に点字があることで、誤操作を防ぎ、自分の望む設定を確実に行うことができます。最近はお米の価格が高騰しており、以前ほど頻繁には使いませんが、炊飯器の点字サインも重宝しています。特に「高速炊き」などの機能は急いでいる時によく利用し、機能ボタンの識別に使っています。


また、家庭の外、街中にも多くの点字サインが広がっています。例えば、駅の階段の手すりには、次の場所や階数を示す点字表示があります。これは、たとえ目的地や乗る電車がわかっていても、できる限り確認して利用するようにしています。安心感を得るため、そして万が一の誤認を防ぐための重要な習慣です。駅の手すりの点字は、駅構内の構造を頭の中で再確認する役割も担っています。さらに、駅の券売機横に貼ってある料金表、地下鉄の駅にある駅マップにも点字サインが使われています。こうした細かな情報一つひとつを確認しながら、私は毎日を安全に、そして自立して過ごしています。特に駅マップの点字サインは、大規模なターミナル駅などでの方向感覚を掴むのに役立ちます。


点字は、日常生活の確認作業だけでなく、私の仕事や趣味においても必須のツールです。私は点字デバイスも使用しており、会議での資料確認や読書をする際には点字が欠かせません。この点字デバイスを使うことで、パソコンやスマートフォンのテキスト情報をリアルタイムで点字に変換して読み取ることができます。デジタル化が進む現代においても、触覚から得られる確かな情報としての点字の価値は不変であり、むしろデジタル情報へのアクセスを可能にする重要な橋渡し役を担っています。


そして個人的な喜びとしては、スーパーなどで点字サインがついている商品を見つけると、ついつい嬉しくなり、その商品を買ってしまうことがあります。これは、製造者側の「視覚障害者への配慮」を感じる瞬間であり、社会のバリアフリー化が進んでいることを実感できるからです。それは単なる情報提供に留まらず、社会の一員として認められているという感覚を与えてくれます。
点字サインは、私たち視覚障害者にとって、安全と自立を支える大切なインフラです。今後も、点字サインのさらなる普及とともに、音声やデジタル技術といった多様な手段と連携し、すべての人が必要な情報にアクセスできるような、より包括的な社会の実現を願っています。

次回もお楽しみに!


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【編集部より】
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