全盲の僕に見えること~地域移行しています~(第13回)
(文・写真撮影:筒井 安彦)
こんにちは、iPadライフクリエーターの筒井安彦です。今回は、視覚に頼らずに家電を使いこなし、生活を豊かにするための「工夫と選択」、そして今私が密かに抱いている「新たな野望(テレビが欲しい)」についてお話ししたいと思います。
触れて、聞いて、対話する——私と家電の付き合い方
日々の暮らしを支えてくれる家電製品。皆さんは選ぶ際、何を基準にされていますか?デザインやスペック、省エネ性能など様々だと思いますが、私の場合は「アクセシビリティ」が最優先事項です。
現在、我が家で活躍している家電たちは、大きく分けて三つのタイプに分類されます。一つは「
例えば、毎日の食卓に欠かせない炊飯器。これには点字がついているので、指先で設定を確認しながら、迷うことなく操作が可能です。一方で、愛用しているIH調理器には点字も音声案内もありません。操作のたびに鳴る「ピッ」というビープ音だけが頼りです。しかし、ボタンの数はわずか六個。このシンプルさこそが最大の武器です。配置さえ覚えてしまえば、目で見えなくても直感的に扱うことができます。
購入する際は、必ず実機に触れるようにしています。「どのボタンがどこにあるか」「押し心地はどうか」「音のフィードバックはあるか」。自分の指先と感覚で確かめる。このプロセスがあるからこそ、視覚に頼らずとも、日常の家事をスムーズにこなすことができるのです。


迷宮のリモコン、旅先の知恵
そんな私でも、思わず「お手上げ」と言いたくなる家電があります。その筆頭がエアコンです。
エアコンのリモコンというのは、どうしてあんなにボタンだらけなのでしょうか。温度調整、風量、風向、タイマー、除湿、内部クリーン……。視覚情報なしにあの無数の突起から目的の機能を探し当てるのは、まさに至難の業です。幸い、自宅のリモコンは比較的シンプルなモデルを選んだため、なんとか使いこなせていますが、問題は「旅先」です。
ホテルの客室にあるエアコンのリモコンは、機種もメーカーも千差万別。まさに未知との遭遇です。そこで私は、チェックイン時にフロントの方にお力添えをお願いすることにしています。「温度は24度、風量は自動で設定しておいていただけますか?」と。そして、自分では「入」と「切」のボタンの場所だけを教えてもらう。この「事前の準備」と「割り切り」が、見知らぬ土地での夜を快適に過ごすための私の知恵です。
同じようにボタンの多いテレビのリモコンも難敵ですが、実のところ、我が家には現在テレビがありません。そのため、ホテルでもテレビをつけることは滅多になく、この問題は自然と回避されてきました。……これまでは。
新たな野望:なぜ今、テレビが欲しいのか
ところが最近、そんな私の心境に変化が訪れました。「テレビが欲しいなあ」と本気で考え始めているのです。
というのもスマホやタブレットで「ユーチューブ」をみていてテレビで見るといい音になるのではと思ったことがあり、それ以来テレビが欲しいと本気で思うようになった訳です。テレビ放送を見たいわけではありません。最大の目的は、YouTubeを大画面(というか、据え置きの環境)で楽しむことです。今はiPadを活用して様々なコンテンツを制作・視聴していますが、据え置きのデバイスとしてテレビがあれば、生活の動線がさらに広がるのではないかと考えています。
また、最近のテレビの進化には目を見張るものがあります。外部音声を取り込めるモデルも増えており、スマートフォンのradiko(ラジコ)から流れるラジオ音声を、テレビのスピーカーに出力することもできるでしょう。
そして何より、私の大きな楽しみである野球観戦です。球場の熱気、バットがボールを捉える快音、観客の声援。これらをテレビの質の良いスピーカーで聴くことができたら、臨場感は今よりもずっと高まるはずです。まるでスタジアムの特等席にいるかのような音の響きに包まれながら、試合の行方に一喜一憂する——そんな時間を想像するだけで、ワクワクが止まりません。
工夫の先にある「ワクワク」を求めて
見えないからといって諦めるのではなく、自分に合った道具を選び、時には周囲の助けを借り、自分なりの工夫を凝らす。そうすることで、不便さは「自分だけの使いこなし」という楽しみに変わります。
これまでは「ボタンが多くて大変だから」と避けていたテレビ。しかし、音声読み上げ機能の充実や、音声操作の普及により、視覚障害者にとってもテレビはかつてよりずっと身近な存在になりつつあります。
新しい家電を導入することは、私にとって新しい生活の扉を開くことです。iPadライフクリエーターとして、そして一人の生活者として、音と手触りを頼りに、これからも家電との心地よい関係を築いていきたい。さて、音質の良いテレビが我が家にやってくる日は、そう遠くないかもしれません。その時はまた、音に包める暮らしのレポートを皆さんにお届けしたいと思います。
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【編集部より】
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