作る楽しみが日常を豊かに

第27回 ほうじん遊遊ひろば(港区宝神)

【誤記訂正】20260827 07:22 連載回数を訂正(28回→27回)いたしました。

2026年7月25日、名古屋市港区宝神の宝神生協診療所で開かれた「ほうじん遊遊ひろば」を訪ねました。この日は小物をつくる手芸をします。猛暑にもかかわらず、会場には「お久しぶり」「まだ始まったばかりだよ」と声を掛け合う参加者の姿がありました。

「暑さに負けない笑顔があふれる手仕事の時間」

取材当日は酷暑日。代表の長坂さんは「今日は特別暑いので、いつも来る人が来られないかもしれない」と心配していました。しかし開始時間が近づくと、参加者が一人、また一人と集まります。

遅れて来た参加者が「すっかり忘れてたー」と笑えば、「まだ始まったばかりだよ」との声が飛び交います。飛び入りで訪れたという人には「お久しぶり」と迎える方もいらっしゃいました。その何気ないやり取りから、長年積み重ねてきた信頼関係が伝わってきます。

この日の題材は、布で作る牡丹型のブローチです。チェック柄の布を花びらに見立て、ちりめん和布の玉飾りを花芯にして仕上げます。

実は参加者が会場で行うのは最後の組み立てだけです。布はあらかじめ縫いやすい形に裁断され、花芯も準備済み。材料の下ごしらえは長坂さんが一人で担当しています。時には参加者と一緒に材料を買いに行くこともあるそうです。

「表が見えるように折って、ここからここまでチクチク縫ってね。」と、長坂さんが説明すると、即座に「ひっくり返さなくていいの?」という質問が飛びます。思ったことをすぐに口に出せるのは、気さくに話せる雰囲気があるからです。

参加者に説明する長坂さん(中央)
参加者に説明する長坂さん(中央)
糸通し器と板磁石
糸通し器と板磁石

参加者は、お菓子の空き箱やプラスチックケースに裁縫道具を入れて持参しています。板磁石で待ち針を落とさない工夫や、糸通し器を使って針に糸を通す工夫など、経験から生まれた知恵があちこちで共有されていました。作品づくり以上に、日々の暮らしに役立つ知恵を持ち帰れることも、この場の魅力なのだと感じました。

「友人に誘われて始まった、新しい楽しみ

約5年前から通う参加者は友達一緒に来ていいるそうです。「おしゃべりが楽しいの。家でテレビ相手に話しても反応はないでしょう。」と笑います。人と向き合って話す時間そのものが、大きな楽しみになっているようです。

他にも「友達に誘われて来ました。」「人づてに聞いて来たんです。」と口コミで参加者が広がってきたことが分かります。今年から参加したという女性は、「手芸は得意じゃないけれど、何か作るのが好きなのよ。」と話します。

手芸の経験がある人も、初めて挑戦する人も、それぞれのペースで作品づくりを楽しみます。完成が近づくと、「ほんと下手〜。」と照れながら、「下手なりに味があるでしょ。」と周囲を笑わせます。長坂さんは「同じキットを用意しても、同じものはできないの。自分でできたモノが正解です!」と声を掛けます。別の参加者が、「なんか変じゃない?」と尋ねると、「愛嬌、愛嬌。」という返事が返り、会場は笑いに包まれました。

材料をあらかじめ加工しておくから、手が早い人は1時間足らずで完成し、裁縫が苦手な人も2時間のうちに作品を仕上げるそうです。参加者からは、「すぐできるようにセットしてくださるでしょ。本当にありがたい。」「ここに来れば何かできるというのがいい。考えて用意する人は本当に大変だと思います。」そんな感謝やねぎらいの声も聞かれました。

長坂さんは、宝神生協診療所が開設した翌年から約15年間この活動を続けています。参加者が無理なく取り組めるよう「2時間で、おしゃべりしながら誰でもできそうな物にしています。ここで完成しなくても家で作ってもいいし。」と語ります。難しい作品を作ることよりも、「自分でできた・作れた」という満足感を持ち帰ってもらうことを優先しているそうです。長坂さんの表情からは、一人ひとりの力を信じる姿勢が伝わってきました。

完成した作品
完成した作品
会場の様子
会場の様子

時には、みなと医療生協理事の川崎さんも企画に加わり、参加者自身が講師となって絵手紙を教えたり、おやつ作りをすることもあるそうです。参加者が「教わる人」だけではなく、「教える人」にもなれることが、このサロンの特徴です(※)。今後も手芸だけではなく、参加者が得意なことを生かせる企画を増やしたいと考えているそうです。

近年は、一人で過ごす時間が増え、人と話す機会が減っている人も少なくありません。そのような中、気軽に立ち寄り、自分の役割を持ちながら人と時間を共有できる場は、地域にとってますます重要になっています。

もし近くに住んでいるなら、一度足を運んでみてはいかがでしょうか。新しい趣味や地域との接点は、思いがけない日常の楽しみにつながるかもしれません。

※誰かに教えるまたは教えようとすることで、その学習内容に対する自身の理解が深まることを、プロテジェ効果といい、教育心理学分野で研究・実証されています。

Expecting to teach enhances learning and organization of knowledge in free recall of text passages – PubMed
The present research assessed the potential effects of expec…
サロン概要
名称ほうじん遊遊ひろば
所在地名古屋市港区宝神3-21207-2(宝神生協診療所)
開催日時第4土曜日 10:00~12:00
利用者負担100円(材料費別途)
運営みなと医療生協(宝神ブロック港西支部)
申込・連絡先052-651-0305(名古屋市港区社会福祉協議会)
参加方法当日会場へ
サロン紹介


 

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