第28回 サロンゆとり(港区野跡)
梅雨の蒸し暑さが残る6月下旬の午後、複数の住宅ビルが建ち並ぶ空をカワウがゆっくりと飛んでいました。港区野跡は、ラムサール条約湿地に登録されている藤前干潟を一望できる地域です。住宅群は干潟のすぐ隣にあり、その一角の集会所で、「サロンゆとり」は開かれています。第2日曜日はカラオケ、第4日曜日は健康マージャンを楽しみながら、それぞれのペースで過ごせるのだそうです。
健康マージャンとは
勝敗だけを競うのではなく、参加者同士の会話や交流を楽しみながらゲームを進めるマージャン(※)です。年齢や経験を問わず始めやすく、全国各地で地域活動として取り入れられています。
※一般社団法人日本健康麻将協会は、「賭けない・飲まない・吸わない」を合言葉に、行政と協力して「健康づくり・仲間づくり・生きがいづくり」を目的とした健康麻将(ケンコウマージャン)の普及に取り組んでいます。
初めて牌を触った人も、今では毎月の楽しみに
ーーマージャンの魅力は何でしょうか?
サロンゆとりに参加している女性は、「何で好きなんだろう。」そう首をかしげながらも、「(ゲームで)あがるとうれしいですね。」と笑います。また、別の方も、「頭を使って、お話しできるのが楽しい。」と話します。
この日は2つのテーブルで、それぞれが対戦を繰り広げていました。一つのテーブルは経験者の4人、もう一つはまだまだ初心者の域をでていない方々です。代表の山下さんは「誰かが教えてくれるから大丈夫。安心して。」と、マージャンが初めての人でも参加できると笑顔で語ってくれました。


ここで初めてマージャンを覚えた人も少なくありません。「今まで牌を触ったこともなかったんですよ。」と、笑顔で振り返ります。「わからなくても、守護霊が教えてくれるからね。」と語るのは若い男性です。ここでは経験者のことを”守護霊”と呼び、初心者の後ろに立って教えながらゲームを進めるそうです。特別な講習はなく、実際に卓を囲みながら少しずつ覚えていくのが、サロンゆとりのスタイルです。
「一人じゃできないからね。」「家にいるだけだと退屈だから。」と、ゲームそのものだけではなく、人と顔を合わせる時間が楽しみになっている様子も伝わってきました。同じ卓の男性は、マージャン歴70年の90代。年代が違っても、同じ卓を囲めば自然に会話が始まります。「月に一回のお楽しみだね。」と毎回来ているそうです。
参加する理由もさまざまです。「私は団地だから、エレベーターを降りるだけ。」という人もいれば、「自転車で10分かけて来ています。」という人もいました。「仕事が無い時だけ、たまに参加しています。」という方もいます。自分のペースで楽しめるから、続けられるそうです。
マージャンには時間がかかるイメージがありましたが、ほどなく「リーチ!」という声があがりました。おしゃべりの合間に見え隠れする参加者の表情は真剣そのもの。ルールを知らない筆者には何が起きたのかわからず、皆さんが手と牌を次々と動かし、瞬く間に勝負がついたようです。
地域の変化に合わせて活動を広げてきた11年間
山下さんが活動を始めたのは11年前です。団地の住宅は上下の移動が多く、高齢者の交流が難しくなっていると感じたため、「誰でも立ち寄れる場所をつくろう」と考え、月一回のカラオケを始めたそうです。
「もっと参加できる日があればという声があって、6年前に健康マージャンを始めました。」と、山下さんの思いが少しづつ、この地域に広がっているのだとわかります。
山下さんは、この活動に特別な目標を掲げているわけではありません。「みんなが楽しめるように、工夫をするのが楽しいんです。」そう穏やかに話します。
マージャン卓もその一つです。軽くて折りたためる卓があることを福祉会館で交流している人に教えてもらい、準備や片付けの負担を減らしたそうです。


毎回、カラオケは10人ほどの参加者が、マージャンは6,7名の参加者がいるのだとか。みんなで準備し、片付けまでいっしょに行うことで、つながりを確認しているのかもしれません。
近年は単身世帯の増加や、近所付き合いの変化などから、日常の中で気軽に人と会話する機会が減っていると言われています。だからこそ、無理なく顔を合わせられる地域の活動が果たす役割は、以前にも増して大きくなっているのではないでしょうか。
「来てみようかな」が地域を変える第一歩
マージャンは4人で行うゲームです。4人という枠があるから会話が生まれる一方、4人という枠に縛られてしまうこともあるそうです。
山下さんは、「今日は、開始前に4人来てくれたんですよね。でも突然だと、対戦の順番を調整できないので、残念ですがお帰りいただきました。事前に連絡があれば、交代できるんですけれど」と、もっといろいろな人に来てもらいたいと願いながらも、運営の難しさも語ってくれました。
参加者からは、「知らない人とも対戦してみたいですね。」「初めてでも全然大丈夫ですよー」と気さくな声が聞かれ、取材中も、経験者が初心者へ自然に声をかける姿が何度も見られました。誰かに教わり、誰かを教える。その繰り返しが、見えない安心につながっていくのだと感じます。
地域で暮らしていても、「何か始めたい」と思いながら最初の一歩が踏み出せない人は少なくありません。もし興味を持ったなら、一度問い合わせをしてみてはいかがでしょうか。新しい趣味が見つかるだけでなく、休日の過ごし方が少し変わるきっかけになるかもしれません。
サロン概要
| 名称 | サロンゆとり |
| 所在地 | 名古屋市港区野跡2丁目5-4(シティーファミリー鴨浦集会所) |
| 開催日時 | 第2・第4日曜日 13:00~15:00 |
| 利用者負担 | 鴨浦住民以外は、100円 |
| 運営 | サロンゆとり |
| 申込・連絡先 | 052-651-0305(名古屋市港区社会福祉協議会) |
| 参加方法 | 港区社会福祉協議会へ問い合わせのうえ参加 |

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