居場所づくりの現場「かもめくらぶ」を訪ねて

地域活動支援センター(Ⅰ型)の日常

3月4日、名古屋市港区にある地域活動支援センター(Ⅰ型)かもめくらぶを訪れました。

かもめくらぶは、まったりとした空気が流れる、気の置けない居間のような空間です。座卓を囲みながらパンを食べたり、将棋やオセロを楽しんだり。決まったプログラムに縛られることなく、それぞれが自分のペースで過ごせる、地域の居場所です。

自分が自分であるための「自宅」と、会社や所属組織といった「社会」、その間を繋いでクッションとなっているのが、この地域活動支援センターです。港区の一角にある、その取り組みを取材しました。

居間のような空間で始まったオセロ大会

扉を開けると、程よく暖房の効いた10畳ほどの部屋に穏やかな空気が流れていました。座卓を囲んでいるのは6人ほど。窓際にはテレビとノートパソコンが置かれ、応接室というよりも誰かの家の居間に近い雰囲気です。

穏やかな雰囲気の中でのんびり過ごす利用者
穏やかな雰囲気の中でのんびり過ごす利用者
遅い昼食を食べながらインタビューに答える利用者
遅い昼食を食べながらインタビューに答える利用者

持参したパンをおやつに会話していた利用者の一人はこう話します。
「みんな仲が良くて、いろんなことを話せるんです。過ごしやすい場所ですよ」

天気の良い日には週2回ほど通うという人もいます。
「午前中は(就労継続支援)B型事業所に行って、午後からここに来ています。自由に過ごせるのがいい。家にいるだけだと外に出なくなってしまうので。」

別のテーブルでは将棋の対局が進んでいました。駒を指す男性は笑いながら言います。
「ここはゆるいところがいいんですよ。決まりごとが少なくて」

この日は偶然「オセロ大会」の日。参加者全員がトーナメント形式で対戦するそうです。初めて参加したという女性は、「いきなり大会で驚きましたが、これも面白いですね」と笑顔を見せていました。

かもめくらぶのの居心地を語る利用者
かもめくらぶのの居心地を語る利用者
将棋に熱中する利用者
将棋に熱中する利用者
ここに来る理由、それぞれの生活の変化

かもめくらぶの利用者は20代から80代までと幅広く、特に40〜50代が多いといいます。登録者は76人、1日の平均利用はおよそ12人ほどです。

利用者の多くは、相談機関や福祉事業所の紹介をきっかけにこの場所を知ります。港区障害者基幹相談支援センターや、名古屋市の地域包括支援センター「いきいき支援センター」などから案内されるケースが多いそうです。

決められた活動プログラムがあるわけではありません。将棋をする人、テレビを見る人、雑談する人。思い思いの時間を過ごすなかで、少しずつ生活のリズムが整っていく人も多いといいます。

ここは自由なところがいい」という声が多く聞かれる理由もそこにあります。社会参加の第一歩として通う人もいれば、自宅以外でリラックスできる場所として利用することもあります。肩の力を抜いて、自分と社会の間をつなぐ中継地になっているのです。

かもめくらぶの特徴
かもめくらぶの特徴
大切にしている地域との交流

「かもめくらぶ」を運営するのは、同市から委託を受けている特定非営利活動法人まちかどサポートセンター。スタッフは常勤3人を中心にボランティアも加わっているのだとか。中には、同市の委託を受けて社会福祉法人名古屋ライトハウスが運営する障害者基幹相談支援センターの職員もいて、オール港区の体制をもって地域との交流を重視した取り組みが特色になっています。

同じ港区内の南陽高校や西築地小学校との交流活動のほか、港まちづくり協議会の事業にも参加しています。地域の人たちと関わる機会を積極的につくることで、社会との距離が少しずつ縮まってきているそうです。

小学校の草取りやグラウンド整備などをボランティアで請け負ったり福祉講座に協力したり、こうした取り組みを通じて、地域の中で具体的な役割を持ちながら生活することを支えているそうです。

地域活動支援センターⅠ型
障害のある方が日中に通い、交流や創作活動、相談などを通して地域で生活する力を育む拠点です。国の制度に基づき市町村が設置・委託するもので、専門職が配置され、相談支援や地域交流の取り組みを行います。(医療機関が実施する精神科デイケアとは異なります。)

就労継続支援B型事業所
一般企業で働くことが難しい方が、体調や生活リズムに合わせて働くことができる福祉サービスです。雇用契約は結ばず、軽作業や製品づくりなどを行い、工賃(※)を受け取ります。無理のない働き方を続けることで、社会参加やリハビリの機会を得る仕組みになっています。※令和6年度の愛知県の平均工賃(賃金)は月額27,068.5円

港区障害者基幹相談支援センター:
障害のある方や家族からの相談を総合的に受け付ける地域の中核機関です。福祉サービスの利用調整や関係機関との連携を行い、地域生活を支えるネットワークづくりを担っています。

(参考)
厚生労働省 地域活動支援センターの概要:https://www.mhlw.go.jp/content/001084415.pdf

「心のリハビリ」になる場所
精神保健福祉士の眞田さん
精神保健福祉士の眞田さん

スタッフの精神保健福祉士、眞田靖就さんにお話を伺いました。眞田さんは、大学で心理学を学ぶなかで「心のリハビリ」に関心を持ったといいます。

「身体のリハビリはよく知られていますよね。身体が動かない方が、理学療法士の支援で少しずつ動けるようになる。でも、身体は動くのに心が動かない方もいます。そういう人にも心のリハビリがあればよいのではないかと」

かもめくらぶの魅力を「利用者さん同士が支え合って前向きに取り組んでいる姿は素敵ですね。私も見習っています」と笑顔で語ってくださいました。

かもめくらぶの利用に、区役所への手続きは不要です。見学や体験も可能で、利用料金も基本的にはかかりません(創作活動などは実費の材料費が必要)。相談から気軽に訪れることができます。地域での生活に迷いや戸惑いがある方、本人だけでなくご家族も、気になる方は一度問い合わせてみてはいかがでしょうか。

事業所概要
事業所名地域活動支援センター(Ⅰ型)かもめくらぶ
所在地名古屋市港区浜1-3-16 2F
利用日時月〜金 9:00〜16:00
運営者特定非営利活動法人まちかどサポートセンター
問い合わせ先052-661-0390 / kamome@y7.dion.ne.jp

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