第8回 子どもたちに寄り添う学習支援「まるいけスマイル」(港区成章)
6月とは思えない猛暑の夕方、市営住宅の一角にある集会所に、汗をかいた子どもたちが次々とやってきます。ここ「まるいけスマイル」は、学びを通じて子どもたちの未来を応援するサロンです。16時を過ぎてしばらくすると、ランドセルを背負った小学生たちが涼しい室内へと吸い寄せられるように入っていきます。この場は、単なる学習のための空間ではありません。好きなことを語ったり、絵を描いたり、他者と関わる時間そのものが、安心感と自信につながっています。「もう少し居たい」と思える、そんなひとときが、「まるいけスマイル」の魅力です。
「学び」の形を広げたい
名古屋市で最も外国人が多い港区では、ブラジル・ネパール・ベトナムなど、色々な国の家庭があり、それぞれの子どもの親が、教育に対して異なる意識を持っています。2020年度に改訂された新しい学習指導要領ではアクティブ・ラーニングの視点が取り入れられました。しかし、高校に進学するには日本語での結果が求められます。
代表の志村さんは、地域コミュニティと外国人との関わりを地理学の視点で研究している大学院生。「優秀な子、しっかりした夢を持っている子がいます。でも、言葉がわからないと学校の勉強についていけない。そして学校にも行かなくなってしまいます。」当初は居場所づくりを目的として始まったこのサロンも、子どもたちが将来を自ら選べるように、学習支援へと方向を変えているそうです。「自分で来たいと思って日本に来た子どもはいない。(生きていくために)勉強して欲しい。」と語ります。
会場の管理や行政との連絡など、運営面でのサポートは、地域に深く関わってこられた方です。かつて町内会長を務めていた齋藤さんは「高齢者が受けてきた教育と今の子どもが受ける教育は内容が異なるので、子どもに教わることも多い。勉強内容に口は出さないで、学習ではないところで支えたい。」と。鍵を開け、椅子や机を整え、子どもたちを迎える準備を整えます。協賛企業から提供されたおやつがあるときには、子どもたちに配布することもあります。こうした環境づくりには、「安心して過ごせる場所でありたい」という思いが込められています。


「世の中の人はみんなすごいよ!」
参加する子どもたちは、単に宿題をこなすだけでなく、自分の得意なことや好きなゲームに興じることも多いそうです。この日、宿題を終えたAさんは、スマートフォンに映るゲームのキャラクターを裏紙に描いていました。「先生、私のも見て!」同級生のBさんは、スマホに保存してある自作のイラスト画像を見せてくれました。昨夜、1時間半程度で書き上げたという好きなゲームのオリジナルキャラクターだとか。大人顔負けのファンアートです。「すごいね」と声をかけると、「世の中の人はみんなすごいよ!」と、屈託のない笑顔で敬意を示してくれました。”子どもに教わること”を実感し、心が洗われる思いです。


日本人も外国人も、もう一歩踏み込んでくれたら
宿題や日本語学習をサポートする先生役は、元教員や地域の有志など12名のボランティア。十分とはいえない人数ですが「無理しないで休んでください。」をお互い口に出しているのだとか。潜在的に支援が必要な子どもは多く、地域コミュニティの中でサロンを継続していくためには、サポートする側にも余裕が必要です。
長年、この地域に関わってきた齋藤さんは「親は、自分が育ったように子どもを育てます。日本人も外国人も、もう一歩踏み込んでくれたらいいのだが」と語ります。
多文化共生は港区の現実です。志村さんは「高校生になった子が進学したいと相談に来てくれることが嬉しいですよね。」と、子どもたちの可能性を広げることが自身の動機に繋がっていると話してくれました。誰もが学びやすい環境づくりは、誰にとっても可能性が広がる場所をつくることなのかもしれません。
サロン概要
| 名称 | まるいけスマイル |
| 所在地 | 名古屋市港区丸池町1丁目1−1(丸池荘 集会所) |
| 開催日時 | 毎週水曜 17:00〜19:00 |
| 利用者負担 | なし |
| 運営 | 名古屋市港区社会福祉協議会 |
| 申込・連絡先 | 052-651-0305(名古屋市港区社会福祉協議会) |
| 参加方法 | 事前申込不要、当日直接会場へ |
【編集部より】
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